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シネ・リーブル梅田にて1週間限定ロードショー
《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2016》5監督インタビュー

日本映画・映像振興施策の一環として文化庁より映像産業振興機構(VIPO)が委託を受け実施・運営する《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》の上映会が3月18日(土)より、今年もシネ・リーブル梅田にて1週間限定で実施される。

ndjc(New Directions in Japanese Cinema)は、2006年にスタートした日本映画の活性化を目指したプロジェクトで、優れた若手映画作家を対象に、映像製作技術と作家性を磨くために必要なワークショップや35ミリフィルムによる短編映画製作を実施することで、次世代を担う日本映画界の映画監督を発掘・育成している。

2016年度、脚本審査を通過し、ワークショップを経た5人の作家の最終課題である35ミリフィルムによる短編映画がついに完成させた、『白T』金 允洙(キム ユンス)監督、『ジョニーの休日』新谷 寛行(シンタニ ヒロユキ)監督、『パンクしそうだ』目黒 啓太(メグロ ケイタ)監督、『戦場へ、インターン』籔下 雷太(ヤブシタ ライタ)監督、『SENIOR MAN』吉野 主(ヨシノ マモル)監督に話を訊いた。

『白T』金 允洙(キム ユンス)監督
 

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◆ndjc応募のきっかけ
もともと映画館で働いていて、去年の《ndjc》を映写したことがきっかけで知りました。プロの方々と一緒に映画を作れるというのを魅力に感じました。
作品について
自分が白いTシャツを好きだったというところから脚本を直す過程で、人間の弱さを描ければと。青や緑を意識した画面に。些細な動きで印象を与えてしまうことに面白さと怖さもある。
プロダクションが入って
軸はブレずにいらないものは削るという、普通の脚本直しの作業なんですがとてもスムーズに進みました。今までは自分以外の視点がなかなか入りにくかったけど、良い経験になりましたし、初めての経験で新鮮でした。
◆映画を意識した初期衝動は?
思い返すと宮崎駿さんの『天空の城ラピュタ』が小学生の頃大好きで。なんても言えないさびしい気持ちになって。そのとき初めて製作者側になりたいという気持ちが芽生えた。
◆30分という時間について
長編でやるべきことを短編としてやらないということ。30分を想定して脚本を書きました。
キャスティングについて
希望キャストのリストを渡してほぼほぼ通りました。
◆初めてのフィルムでの撮影は?
楽しかったです。
 

 

『ジョニーの休日』新谷 寛行(シンタニ ヒロユキ)監督
 

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◆ndjc応募のきっかけ
《ショートショート フィルムフェスティバル & アジア》から紹介されたのがきっかけです。《ndjc》をどういうものなのかあまり把握しないまま参加してしまいました。
作品について
ある美術スタッフには「浦島太郎のよう」と言われた。楽しい晩餐の後に月日が経ったこと、自分が変わっていないことに気づく。付き合っていた期間の自分、過去の自分を知ってる元カノという存在に会うことで気まずい雰囲気になる。ひとりの男の過去を振り返り、時間と恋愛を描きたかった。今回脚本書くときに意識したのが70代80代のおばあさんから見た男像。いつの時代も男は馬鹿だなっていう目線で書けたらと。
プロダクションが入って
脚本指導やプロダクションが入ることで、いろんな年齢層の方が脚本を読み、女性には3姉妹の描写、娘のいる父親などの心情などを聞けた。若い人たちだけでは作れない視点がいただけて良かった。
◆映画を意識した初期衝動は?
中学生のときにタランティーノの映画を観て映画が大好きになったけど、日本語に翻訳した脚本などを読むとアメリカ人にしか分からないものがあって僕らが100パーセント面白いと思うのは無理なんだなと感じていました。それで最近向田邦子さんの「あ・うん」を読んで、やっと日本人に分かる面白さに気づいて勉強になりました。それで初めて脚本を書き上げられました。
◆30分という時間について
一軒家の話にしたかったので冒頭から窮地に立たされている状況から始めるほうがいいと思いました。30分の中で6人の登場人物が出てくるのでサラッと紹介して本題に入らないといけない。真ん中にいざこざを作って、ラストにどう持っていくかという段階を自分の中で作ってから書きました。
キャスティングについて
キャスティングを担当して下さった方が集めてくださって。そこからオーディションをさせていただきました。
◆初めてのフィルムでの撮影は?
憧れだったし貴重な経験をさせていただきました。
 

 

『パンクしそうだ』目黒 啓太(メグロ ケイタ)監督
 

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◆ndjc応募のきっかけ
3年前に《ndjc》の作品で助監督として参加したのがきっかけ。去年の《ndjc》に参加した堀江貴大監督が大学の後輩で、いろいろと話を聞いて応募しました。
作品について
青春に見切りがつけれないでいた男の“覚悟”の話。僕自身が高校・大学とバンドをやっていたことと娘が誕生したことが影響して書きました。子どもが生まれてるのに何してるんだろうとか思いながら、脚本を直したり。笑。
プロダクションが入って
もともとは女性を主人公に、女性がフラフラした男を見るという形だったんですが、プロデューサーが「男が主人公のほうがいいのでは」と提案してくださり、物語の本質や何を描くべきかがクリアになりました。
◆今回の映画に影響を与えている人はいますか?
沖田修一監督。人物とちょっと距離がある撮り方をしつつ、感情がしっかり見えてくるところとか、ちょっと笑いの要素もあるところとか。意識したというほどではありませんが心の隅っこにちょっとありました。
◆30分という時間について
もともと書いている長編のシナリオがあって、これはその中の1エピソードを抽出して書きました。なので30分くらいになるというイメージはついていました。登場人物それぞれの心情も大事に撮影したんですが、最終的には主人公の心情を中心にすえて編集していきました。
キャスティングについて
楽器が出来ることが必須条件でオーディションをして、その場でバンドを組んでもらって演奏してもらいました。バンド経験があって今は役者していますという方がたくさん集まってくださった中から、主人公を演じてくださった亀田さんからは「バンドが好き」という感じが伝わってきた。
◆初めてのフィルムでの撮影は?
貴重な経験でした。デジタルで撮ったときと、そこにある実態としての現実味の説得力が違うなと思いました。
 

 

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◆ndjc応募のきっかけ
去年の《ndjc》に参加した佐藤快磨監督と一昨年参加した飯塚俊光監督が学校の先輩。やっぱりフィルムで撮れるというのが魅力でその質感を活かした映画が撮れないかなと思った。
作品について
映画の撮影現場を舞台に、制作スタッフさんと役者らのコントラストを描きたかった。もともとはフィルムの質感を活かしたくてタイムスリップものを考えていたけど、時間の流れを最後に感じられる作品が撮れたらと思った。普遍的な物語を目指して、スタッフとして自分が体感していくような物語を作りました。
プロダクションが入って
脚本指導もプロデューサーも「業界あるあるだけでは終わらない内容にしましょう」と言ってくださり、結構脚本の直しが入りました。プロデューサーが長く制作の現場におられた方なのでロケハンとかにも連れ出してくださったりしながら脚本を固めていけたのが、いい経験だったなと思います。
◆映画を意識した初期衝動は?
映画デビューが遅くて大学生ぐらい。その頃ミニシターブームでオフビートなジャームッシュ監督やカウリスマキ監督、日本なら山下敦弘監督とかが好きでした。なので自分が作るのもどこかオフビートなものが好きだったんですけど、今回はもう少しストレートな作品を作りたいなと。それで思い浮かんだのが井筒和幸監督。『パッチギ』とか好きで観直して。パワーのある映画を作りたいと思いました。
◆30分という時間について
最初は映画の撮影現場の群像劇だったので、それを30分に収めるにはかなり的をしぼらないと、となりまして若い女優とインターンの女の子のお話に要素を絞りました。30分の1カットを撮ってる間の悲喜こもごもを描くというのは短編だからこそ出来る面もあるのかなと。
キャスティングについて
オーディションで伊藤沙莉さんが来てくださって、すごく良かったので彼女に合わせて脚本も変えていきました。女優役の荻原みのりさんも実はインターン役でオーディションに来てくれたんですが、伊藤沙莉さんと対照的で面白いなと思ったので女優役で演じてもらいました。共演経験もあるらしくその同級生感も出てよかった。
◆初めてのフィルムでの撮影は?
フィルムで撮りたいというところから始まっているので、カメラマンさんや照明さんのおかげで中と外のコントラストが出せて嬉しいです。キャストのおかげでコントラストも強調されたので狙い通りになって良かった。暗いところでも明るいところでも綺麗に写るのはフィルムならではだと思います。仕上がりを観て綺麗だなと思いました。
 

 

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◆ndjc応募のきっかけ
映画監督になりたくて助監督になったんですが、助監督だけやってても監督にはなれないことに気づいて。その矢先に助監督の先輩が《ndjc》で監督して、そこで助監督として入って。それがきっかけでこういう道もあるんだなと思い、企画を応募し始めて。今回、3回目にしてチャンスをいただきました。
作品について
あまり人とネタがかぶらないようなものにしたくて、かなり年上の方の話かその反対かどっちかだなと。それで僕自身が祖父と仲が良かったので老人の方が描きやすいかなと思って老人が活躍するお話にしました。言葉より行動のほうが伝わる。今回なるべく行動で伝えたくて台詞はかなり削りました。
プロダクションが入って
あまり脚本の直しはなかったんですが、プロダクションから言われたのは「もう少し何を伝えたいか明確にしたほうがいい」と言われてコンセプトから練り直しました。大筋は変わらないのですがそれで本直しをつめていきました。
◆憧れの映画監督は?
誰かを目指しているわけではないですがハリウッド映画が大好きです。スピルバーグも大好きですし、あとチャップリンとかも大好きです。
◆30分という時間について
助監督ばかりやっていて短編も撮ったことがなかったので、なんとなく短編の枠にとらわれないで、老人は今までいろいろな面白い人生を歩んでいるだろうから描けば何かが出てくると思った。30分って微妙に長いと思ったので退屈しないような作品を心がけました。
キャスティングについて
主人公の峰蘭太郎さんに関しては『桜田門外ノ変』でご一緒してて第一希望でした。ほとんどの人が助監督として入った現場でご一緒したことがある方なんですが、出ていただきたい人のリストを20人くらい上げてその人たちに交渉してもらいました。
◆初めてのフィルムでの撮影は?
仕上がった作品を観るとやはり質感が違って、“映画のイメージそのもの”という感動はありました。
 



(2017年3月17日更新)


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Movie Data

《ndjc》

▼3月18日(土)18:15
 3月19日(日)~25日(金)18:30
 シネ・リーブル梅田
 一般1200円 学生・シニア1000円
 ※5作品まとめて。


★上映作品★

『白T』
監督・脚本:金 允洙
出演:弥尋、桜井ユキ、般若
制作プロダクション:ジャンゴフィルム

『ジョニーの休日』
監督・脚本:新谷寛行
出演:金井勇太、川添野愛、大塚千弘、かでなれおん、服部妙子、鈴木一功
制作プロダクション:シネムーブ

『パンクしそうだ』
監督・脚本:目黒啓太
出演:亀田侑樹、松山愛里、夛留見啓助、イワゴウサトシ、岩井堂聖子
制作プロダクション:オフィス・シロウズ

『戦場へ、インターン』
監督・脚本:籔下雷太
出演:伊藤沙莉、萩原みのり、郭智博、米村亮太朗、青木健、塚本耕司
制作プロダクション:角川大映スタジオ

『SENIOR MAN』
監督・脚本:吉野 主
出演:峰蘭太郎、田中要次、油井昌由樹、久保晶、外波山文明
制作プロダクション:松竹撮影所