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「自分の映画人生で素敵なものになっていく自信もありました」
蒼井優と松居大悟監督が出席した
映画『アズミ・ハルコは行方不明』大阪記者会見レポート

蒼井優が『百万円と苦虫女』以来、8年ぶりの単独主演を務めた注目作『アズミ・ハルコは行方不明』が12月10日(土)より、シネ・リーブル梅田、109シネマズ大阪エキスポシティ、T・ジョイ京都、12月17日(土)より、シネ・リーブル神戸にて公開。2013年に発表された山内マリコの同名小説を基に、『私たちのハァハァ』の松居大悟が監督を務め、独身のアラサーOL安曇春子が突然姿を消した地方都市を舞台に、3世代の女性たちの生き様を時間を交錯させながら描き出す。ポップなエモーショナルと女性賛歌があふれる必見作だ。そこで安曇春子を演じた女優・蒼井優と本作でメガホンをとった松居大悟監督が来阪、記者会見を行った。

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――恋人なしのアラサー女性・春子をとても自然に演じられていますが、どのようにキャラクターを作られましたか?
 
蒼井:台本を読んだ時にこれは自分の話なんじゃないかと思えたんです。春子と同じような経験をしたわけではないですが、わたしの30年近い人生の中で負ってきた傷みたいなものが、春子にもあるような感じがして。それが自分だけでなく、現場の女性スタッフや原作を読んだ友達らも同じように感じたと言っていて。女性なら誰しもが持っている“アズミハルコ”の部分があるんだと思います。なので、蒼井優として味付けするのではなく、春子というキャラクターをカメラの前に置くように気をつけて演じました。
 
――監督は主人公をキャスティングする際、真っ先に蒼井さんが思い浮かんだとお伺いしましたが。
 
松居監督:同郷で同じ年ということで、蒼井さんには以前からいつかご一緒したいと思っていたんですが、ちょうど多感な時期に蒼井さんの出ている映画をいくつも観て、単純に面白かったということだけではなく、今こうやって映画作りをしているのにも少なからず影響していると思います。蒼井さんの顔は蒼井さんでしかない魅力があって、普通の人とは違う生命力がすごく溢れている気がするんです。今回エネルギーのある映画を作りたかったので、蒼井さんにこの中で生きて欲しいと思ってオファーしました。
 
――映画では時系列をシャッフルした脚本になっていますがその意図は?
 
松居監督:脚本に入る前のプロットの段階で時系列を変える作業を始めました。原作は文字で読むのには面白いんですが、そのままの流れで映画にすると「どうやって行方不明になるのか?」を描いたお話になる気がしたんです。でも原作を読み終えると“行方不明”という言葉の印象がネガティブじゃなくなる感覚が面白いと思ったんです。なので、映画では「なぜ行方不明になるのか」ではなくて、言葉の持つ情報やレッテルにとらわれないようにみんなに観てほしくて。“消える春子”と“消えたくなる愛菜”が、だんだんお互いに近づいていって、彼女たちはどうなるんだ? という方向で感じていただければと思い、時間軸を交錯させました。
 
――そんな脚本を読んだときの印象はいかがでしたか?
 
蒼井:わたしはこの脚本の、読み進めてもどこに着地するのか分からない展開に惹かれました。脚本の時系列をシャッフルすることでエネルギーを生み出す手法を取られていると思うんですが、完成形を思い浮かべることが出来ない“攻め”の台本に自分がどこまでやれるかを試されているような感じがしました。
 
――主演の蒼井さん、松居監督、そしてプロデューサーも同じ年というのも作品に何か効果がありしましたか?
 
松居:この世代の空気を切り取りたいと思いました。
 
蒼井:プロデューサー、監督、主演の3人が同い年ということで生まれたパワーがある気がします。そのパワーが途切れない自信だけはなぜかあったので、作っていく上で大実験かもしれないなとは思ったんですが、これが失敗に終わったとしても、自分の映画人生において素敵なものになっていくだろうという自信もありました。
 
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――女性なら誰しもが持っている“アズミハルコ”という言葉がでましたが、女性のウザさと力強さを見事に映していて驚きました。
 
松居監督:女子高生と20歳とアラサーの3世代の女性を描く映画を撮るというところで、ある程度「分からないことばかりであろう」という覚悟は出来ていました。
 
蒼井:松居監督は100パーセント女性のことを理解できるわけではないから「女ってこういうときこうですよね」みたいな押し付けがなくて。
 
松居監督:こういう感情でこうだからとか本当は言わなきゃいけないんでしょうけど。世代によって違う傷もあるだろうし、それが分からないからこそ興味があったところもあります。撮りながらぼく自身も春子の気持ちになったり、愛菜の気持ちになったりしながら作りました。それぞれのキャラクターに命を吹き込んでくれたのは役者さんたちで、このメンバーじゃないとできないものが出来たと思います。
 
蒼井:自由に演じるのとも違って、体験していくような感じでした。
 
――春子の感情の表現で印象に残る場面は?
 
松居監督:原作にはない場面なんですが、春子が曽我とケンカする場面で、リハーサル時は台本通りに演じていただいたんですが、それって愛菜やハタチくらいの女子の行動に見えるなと感じて。春子はもっと周りが見えていて、感情のままに言葉を吐いたりできない、だからもっとカッコ悪くしてほしいという話をしたんです。そのとき蒼井さんと話したことは映画にとってはかなり大きなポイントになったと思います。蒼井さんが感情と行動にズレがあるお芝居をしてくださって、それがすごく良くて。「春子はこういう人だ」と教えてもらえたようでした。
 
蒼井:最初は台本どおりに演じたんですけど、絶対違うなって思ったんですよね。その時に松居監督から「言葉と感情のズレをカッコ悪く、情けなく出してほしい」「セリフも上手く出てこなくていい」とおっしゃって。春子がぶつけている言葉と、彼女の中で流れている言葉が違うんだいうことに気づきました。私もあのシーンを演じることで春子の核ができて、映画にとっても、ご覧になった方にとっても、春子の輪郭がくっきり感じられるシーンだと思います。観る方によって言葉の奥にある意味を違って感じることができる、文字では書けない映画的な場面になったと思います。
 
――完成した作品をご覧になった感想をお聞かせください。
 
蒼井:私たちはアラサーパートを撮っていて、高畑充希ちゃん演じる20歳の女性・愛菜のパートや女子高生のパートについては「こういう撮影をしているよ」という話でしか聞いてなくて。だから繋がっているのを観た時はこんなに色が違う映画を同時進行で撮られていた監督やスタッフをすごいなぁと思いました。
 
――中でも、高畑充希さんが演じるハタチの女の子は、今までの高畑さんが演じてきた役とはまったく違い、新たな魅力を開花されていますね。
 
蒼井:充希ちゃん「愛菜が分からない」とずっと言っていたんですけど、私は愛菜を演じる充希ちゃんを観て、より好きな女優さんになりました。台本読んだ時からわたしも愛菜はすごい難しい役だなあと思って、正直わたしの役じゃなくて良かったと思ったし、自分が20代前半でも絶対できないでしょうね。
 
――共演シーンではいかがでしたか?
 
蒼井:いざ2人が共演する場面では、もう充希ちゃんの表情が愛菜でしかなくって心の中でガッツポーズが出ました(笑)。
 
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――蒼井さん自身が春子のように消えてしまいたいと思ったことはありますか?
 
蒼井:『フラガール』の撮影時、自分の経験値が浅かったというのもあり、撮影とフラダンスの稽古の時間配分がうまくできず、一緒に踊る方たちに申し訳なくて。あの時はホテルの部屋から真っ暗な福島の夜道へ逃げ出したくなったこともありました(笑)。
 
――最後に一言お願いします。
 
蒼井:女性は20代の後半に第二次思春期みたいなものがあって、そういうときに振り返るのが女子高生のときの記憶だったりすると思うんです。この映画はそれをどちらも描いています。春子のように、そこから1歩抜け出すということは女性にとってとても大きなことなんですよね。女性が観れば自分のことのように感じるだろうし、男性には女性ってこうなんですよと知ってもらえるんじゃないかなと思います。ぜひ劇場でご覧ください。



(2016年12月 9日更新)


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Movie Data

©2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会

『アズミ・ハルコは行方不明』

▼12月10日(土)より、シネ・リーブル梅田、109シネマズ大阪エキスポシティ、T・ジョイ京都、12月17日(土)より、シネ・リーブル神戸にて公開

出演:蒼井優/高畑充希/太賀/葉山奨之/石崎ひゅーい/菊池亜希子/山田真歩/落合モトキ/芹那/徳永ゆうき/富岡晃一郎/柳憂怜/国広富之/加瀬亮

監督:松居大悟
原作:山内マリコ
主題歌:チャットモンチー
劇中アニメーション:ひらのりょう
音楽:環ROY
脚本:瀬戸山美咲
プロデューサー:枝見洋子

【公式サイト】
http://azumiharuko.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/168886/