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「将棋の映画ではありますが“生きること”を描いた映画です」
松山ケンイチ×森義隆監督×森信雄師匠が登壇した
映画『聖の青春』大阪舞台挨拶レポート

映画『聖の青春』の試写会が、11月8日(火)に大阪市内で行われ、主演を務める俳優の松山ケンイチ(写真左)が森義隆監督(写真右)と共に舞台挨拶を行った。

本作は、難病を患いながらも将棋に全人生を捧げ、わずか29年で人生の幕を閉じた天才棋士・村山聖(さとし)の壮絶な生涯を、師匠や両親など村山を愛した人々との交流と共に愛情豊かに映し出す実話を映画化した作品。

現在31歳の松山は、29歳(村山聖が亡くなったのと同じ年齢)のときに偶然この原作と出会い、全力で駆け抜けた村山の生き様に感銘を受け「村山さんの生き方、命への向き合い方は何か胸に突き刺さるものがあった」と振り返り、「人生は人それぞれが向き合うもの。いろいろな方に村山さんの生き様を知ってもらいたい。そこから受け取れる何かがたくさんあるんじゃないかと思った」と話した。
 
実は企画から8年の歳月を経て映画化が実現したという本作だが、森監督は「この8年は松山くんが29歳になるのを映画が待っていたのだと思う」と感慨深げにコメント。驚異的な役作りがすでに話題を集めている本作だが、「太ることも提案はしようと思っていたけど、松山さんはすでに目標体重100キロと決めていて。それだけの意気込みで村山さんを演じる松山くんが、村山さんの生き様を体現する姿を見ていて幸せだった」と語った。また「これは命をかけないと演じられない役柄。ぼくの仕事は、村山さんとして命を燃やし続ける松山くんを順撮りしていく中で、その命が途中で燃え尽きないように見つめ続けることでした。自ら手を上げてくれた松山くん以外のキャストは考えられない」と全身全霊で村山を演じきった松山を森監督は絶賛した。
 
順撮りは手間もコストもかかるが、そこにこだわった理由について森監督は「村山さんの生きた軌跡を辿るのに順撮りはすごく大事でした。松山くんも刻々と迫ってくる限られた時間の中でひとつひとつ何かを感じて表現してほしいなと思った。映画を観ればそれば伝わるのではないかなと思います」と本作への自信を覗かせた。
 
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本作は、大阪市福島区の将棋会館でも撮影が行われたが、「松山くんとは誰も思わないから集まってこなかった。どこかローカルの太ったタレントくらいに思ったんでしょう」(森監督)と混乱もなく撮影が行われたとのこと。映画ポスターの写真を松山自ら「サモ・ハン・キンポーではないですよ」と言い、会場の笑いを誘っていた。
 
その後、村山の師匠として生前の彼を支え続け、本作で将棋の指導も行った森信雄さん(映画ではリリー・フランキーが演じる)も登場。森師匠は「撮影中、村山くんと声をかけたくなった。この映画で18年ぶりに村山くんに会えたような気がして嬉しかった」と微笑んだ。撮影が終わってからも、松山は別の撮影で京都を訪れた際も森師匠と会い、初対極をしたエピソードを披露。しかし「と言っても麻雀なんですけどね。村山さんも森さんも麻雀されるのでこれはいつかやらないとと思っていたんです」と笑顔で語った。
 
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東出昌大演じる羽生と村山の対局場面は棋譜をすべて覚えて「初手から最後まで監督に提案してもらって実現できたんですが2時間半長まわしで最初から最後まで全部撮影しています」と松山。森監督は「松山さんはもう村山聖さんだった。病で時間がなく切羽詰ったところで2時間半の対局をする。将棋に入り込んでいく姿はスタート、カットでは撮れないと判断したんです」と明かし、「松山さんも東出さんもぼくの想像をはるかに超える演技を見せてくれて。ぜひ楽しみにしてほしい場面です」と胸を張った。
 
またそんな松山の演技について「ちょっとしたところでも松山さんが納得せず時間をかけて撮っていました。最後にはいいコマ音が出てました。役者魂が見えて本当にすごいなと思いましたね」と森師匠。それに対して松山は「ぼくらはプロ棋士ではないので殺気立つ空気感などをどう出せばいいのかが戦いでもありました。プロ棋士の方の将棋を指すときの美しい手つきとか、ぼくらには未知の領域。ぼくは今回、29歳から練習を始めたわけですが、みなさんは何十年も前からやられている。わからない部分もありましたが頼りになるのは森師匠だけ。なのでずっと対極のときは森師匠の顔をうかがっていました」と実際に良い師弟関係が生まれていたよう。
 
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村山本人に会うことは出来ないが、村山を知る森師匠やプロ棋士の方々、ご両親に会い、松山は「間違いなく言えることはみなさん笑いながら村山さんのお話をされる。それだけ愛されていた方なんだろうなとすごく伝わってきました。だからそういう村山さんを演じなきゃと思いました」と語った。森監督も「みなさんのまなざしから村山さんを感じていくという作り方をしました。その中でも森師匠の言葉や森師匠と一緒に過ごす時間から村山聖を見つけていったような感じです」と話した。
 
最後は「将棋の映画ではありますが生きることを描いた映画です。誰でも命は限られていて無限の時間があるわけではない。自分の感じ方で生きることを照らし合わせてもらえたら嬉しいです」(森監督)、「役者を15年ほどやってきて一番役作りに時間をかけました。役作りってある意味、自分への暴力みたいなもの。役者の自分がそうでない自分を叩きのめすような。それが自分にとっては貴重な経験だった」(松山)と語った。



(2016年11月 9日更新)


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Movie Data

©2016「聖の青春」製作委員会

『聖の青春』

▼11月19日(土)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開

出演:松山ケンイチ 東出昌大
   染谷将太
   安田顕 柄本時生
   北見敏之 筒井道隆
   竹下景子 リリー・フランキー
原作:大崎善生
監督:森義隆
脚本:向井康介

【公式サイト】
http://satoshi-movie.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/169751/