インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 信念を貫き通したひとりの軍人・山本五十六の 新たな一面に迫った人間ドラマ『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』 役所広司、玉木宏ら来場会見レポート

信念を貫き通したひとりの軍人・山本五十六の
新たな一面に迫った人間ドラマ『聯合艦隊司令長官
山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』
役所広司、玉木宏ら来場会見レポート

 聯合艦隊を率いたことで知られる軍人、山本五十六の知られざる半生を描いた『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』が12月23日(金・祝)より梅田ブルク7ほかにて公開される。太平洋戦争に対して、勝つためではなく、終わらせるために臨み、志半ばで散っていったその気高き精神を、役所広司が重厚な演技で体現し、史実では語られていない山本五十六の真実の姿を映し出す力作だ。本作の公開に先立ち、山本五十六に扮した役所広司、戦争に反対する山本の意に反し、世論を戦争へと煽る新聞記者・真藤利一に扮した玉木宏、山本五十六の妻・禮子を演じた原田美枝子、真藤が通う小料理屋の常連でダンサーの神埼芳江に扮した田中麗奈、山本五十六を尊敬する零戦パイロット・牧野幸一を演じた五十嵐隼士、成島出監督が来阪し、会見を行った。

 

役所:映画の中でも新聞社が国民を煽ったように、日本中がこの映画に熱狂するようにメディアの皆さんの力をお借りしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

玉木:僕が演じた新聞記者の真藤という役は、お客さんの目線に近いストーリーテラーのような存在だと思っていたので、映画のキーパーソンだと思って大切に演じました。

 

原田:司令官という立場を離れた素の五十六さんがどんな方だったかを表現する場所が家庭のシーンだと思うので、五十六さんは人間の根っこの部分が優しい方だったということを表現できるように演じました。

 

田中:人の胸を打つ素晴らしい作品に参加できて光栄でした。

 

五十嵐:戦争に向かわなければいけなかった若い青年が、どのような気持ちで戦争に向かっていったのかを表現しました。

 

監督:本当に豪華な俳優陣で映画化できて幸せでした。この映画は戦争映画ではありますが、山本五十六という人物を描いた人間ドラマだと感じていただければ嬉しいです。

 

 と、それぞれが本作に込めた思いを語ってもらい、会見は始まった。真珠湾攻撃によって太平洋戦争を開戦した戦略家として知られる山本五十六。しかし、海軍次官時代の彼は日独伊三国同盟には反対の立場をとっていた。自らの意志に反して戦争を始めた山本は、早期終戦を目指して策を練り、聯合艦隊司令長官として太平洋へと旅立っていくー。そんな山本五十六の人物像について、山本を演じた役所はどのように考えて演じていたのだろうか。

 

役所:一般的に山本五十六さんがどのようなイメージを持たれているのかは色んな判断があると思いますが、五十六さんはアメリカと戦争すればこの国は滅びてしまうことを確信していて、その根拠も持っていて戦争に反対していたのに、戦争の口火をきることになってしまった人。それでも、早く戦争を終わらせることを考えて、とにかく日本という国を焼け野原にしちゃいけないということだけを目標に戦い続け、最後の最後までその思いを貫いた方だと思います。とにかく、世界の中の日本の立場を誰よりもよく理解し、間違った方向にいかないように考え続けた立派なリーダーだったと感じて演じていました。

 

 役所が語るように、山本五十六という人物へのイメージは様々なものがあるだろうが、部下への接し方や、自分の考えは徹底的に述べる姿勢など、本作にはそんな山本五十六という人物像から学ぶものがたくさんあるはずだ。それぞれに山本五十六という人物像から学んだことを聞いてみるとー

 

役所:この映画の中で五十六さんが言う“目、耳、心を大きく開いて世界を見なさい”という台詞は、現代を生きる私たちへのメッセージだと思います。かつての日本人が現代の日本を思い描いて、こんな国にしてほしいという思いがあったと思うんです。僕は、この映画を観て、映画に登場する兵隊さんたちが思い描いていた未来になっているのかと考えてしまいました。

 

玉木:この映画で描かれる山本五十六さんは、戦争に反対していたのに、自分の預かり知らないところでどんどん戦争に巻き込まれていってしまうという、非常に人間らしさを感じる人物に描かれていると思うんです。司令長官ともあろう人がそういう立場にあったんだと思うと、すごく新鮮に映ると思います。

 

田中:どんな時も、自分の個人的な感情を優先せず、現実をありのまま見て、おかしいと思ったらうやむやにせず、抗議という行動を持って訂正したり、方向性をきちんと示すことであったり、故郷を愛する情の深さや、部下に対しても決してえらぶらずにお話する姿だったり、山本五十六さんからは、人間として学ぶことがたくさんあると感じました。

 

監督:脚本を作る段階で、五十六さんの茶目っ気もすごく好きになった部分ではあったんですが、やはり五十六さんの一番すごいところは、全てにおいて根拠を示すところだと思うんです。冷静に相手を見て見極めているのに、人間としての温かさが溢れているという、矛盾するようなふたつの魅力が同居している人物であることに惹かれました。

 

 それぞれに山本五十六という人物像から感じたことはあったようだ。では、そんな山本五十六が生きた時代から70年を経て公開を迎えることへの思いはどのように感じているのだろうか。

 

役所:日本が敗戦して、太平洋戦争が終わって、どれだけ太平洋戦争について様々なメディアで表現してきたのかはわかりませんが、五十六さんが、「平和な時に戦争のことを忘れてしまうとその国はすぐに危うくなる」とおっしゃっているように、たしかにこの戦争から学ぶことはたくさんあると思います。70年目にこの戦争ともう一度向き合って、考えなおす時代だからこそ、この映画が公開される意味があるんじゃないでしょうか。

 

玉木:僕は、戦争映画がただ作られるだけではあまり意味がないように思うんです。映画が作られる以上、ちゃんと現代に通じるメッセージが込められていないといけない。特に今は、色んなことが錯綜しやすい時代になっているので、そういうメディアへのメッセージと、ちゃんと自分自身で真実を掴み取る必要性がテーマになっている映画だと思っています。

 

原田:この数年、戦争を体験した方の証言集のような番組が増えてきていて、実際に戦争に行かれて、今まで人に言えなかった思いを、このままではいけない、語っておかなければいけないと思って証言してくださっている方がたくさんいらっしゃるんです。そういう風に時間が流れたからこそ、この作品も作ることができたんだと思います。きっと、戦後10年20年では作ることができない作品だったと思うんです。冷静になってこの映画を観て、戦争は二度と起こしてはいけないということを伝えていきたいと思います。

 

田中:私が演じた神埼芳江という役は当時の市民の象徴のような人だと思うんです。今は、戦争は絶対に起こしてはいけないと思える時代ですが、当時は戦争をすれば景気が良くなるんじゃないか、豊かになるんじゃないかと一般の市民の方が思っていたことに、すごく驚きました。それだけマスコミの方の力は強いと思いましたし、自分自身の本来の姿さえ失ってしまうような戦争は怖いと思いました。現在も、色んな情報が溢れていますが、風潮に流されずに五十六さんのように“目、耳、心を大きく開いて世界を見る”ことを心がけて、ありのままを自分の目で冷静に物を見るということが現代に生きる私たちへのメッセージだと思います。

 

五十嵐:現代は、暗いニュースが目につく時代だと思うんです。でも、“家族や大切な人を守るために戦わなくてはいけない、それが国のためにもなる”と映画の中で山本五十六さんに言われたように、家族の大切さや守ることの大切さを心に持った若い人たちが増えていかないといけないと思います。そうすれば、現代に流れている暗いニュースも減るんじゃないかと思うんです。だから、僕は何かを“守る”ということがこの時代に伝えたいメッセージだと思います。

 

監督:戦争から70年経って、戦争を知らない戦後生まれが日本の人口のおよそ75%を超えたそうです。この映画を監督するにあたって、70年前のことを色々と調べたんですが、70年前と現代が本当によく似ていることに気がついたんです。70年前は戦争に向かって行ったんですが、今はどこへ向かえばいいのかを脚本作りの時に考えました。子どもたちが夢を持って幸せに暮らせる国になれば、色んなことも頑張れる国になると思うんです。夢も希望もなければ決して前向きになれないですし。70年経って、この映画を観ていただくことで未来のちょっとしたヒントになってくれればいいと思って作りました。

 

 登壇者6人がそれぞれ語ってくれたように、本作は社会不安や閉塞感を抱える現代と通じる70年前に、どこまでも信念を貫き通したひとりの軍人、聯合艦隊司令長官 山本五十六の新たな一面に迫った人間ドラマ。観終わった後には、山本五十六の生き様から得るものがたくさんあると同時に、劇中に登場する“日本は何を間違えて、何に負けたのか”という言葉が胸に響く一作だ。




(2011年12月21日更新)


Check

Movie Data



(C)2011「山本五十六」製作委員会

『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』

●12月23日(金・祝)より、
梅田ブルク7ほかにて公開

【公式サイト】
http://www.isoroku.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/156819/


Ticket Data

【日時】12月24日(土)  16:00の回上映前
【劇場】梅田ブルク7
【登壇者】役所広司/田中麗奈/
成島出監督(予定)
【料金】一般2000円(指定)
大学・高校生1700円(指定)
中学生以下・シニア1200円(指定、3歳~中学生、60歳以上)
【Pコード】559-030

チケット情報はこちら


【日時】12月24日(土)  14:40の回上映後
【劇場】なんばパークスシネマ
【登壇者】役所広司/田中麗奈/
成島出監督(予定)
【料金】一般2000円(指定)
大学・高校生1700円(指定)
中学生以下・シニア1200円(指定、3歳~中学生、60歳以上)
【Pコード】559-033

チケット情報はこちら