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世界の片隅に置き去りにされたふたりの
狂おしいまでの愛の行方を描く『セカンドバージン』会見レポート

 昨年NHKで放映され、大きなセンセーションを巻き起こした同名ドラマを映画化した『セカンドバージン』が大阪ステーションシティシネマほかにて公開中だ。17歳年下の妻のいる男性・鈴木行と恋に落ちた45歳のキャリアウーマン・るいの不倫の果ての苦難の道行きが、マレーシアでのロケを敢行し切なく綴られる。脚本はドラマ版に引き続いての大石静、そして鈴木京香、長谷川博己らドラマ版おなじみのメンバーが再集結し、波乱万丈の恋の行方を狂おしく熱演している。公開に先立ち、鈴木京香、長谷川博己、ドラマ版から引き続いての監督を務めた黒崎博が来阪し、会見を行った。

 

 鈴木京香と長谷川博己が演じた45歳のキャリアウーマンと17歳年下のネット証券会社社長の恋愛ドラマは、NHKというイメージからは想像しにくいドラマだったにも関わらず、社会現象を巻き起こすほどの人気となり、晴れて映画化の運びに。今回、改めて映画でるいと行を演じるにあたって、ドラマ版から変化はあったのだろうか。

 

鈴木:ドラマ版では、強い愛で鈴木行という男性を支えていたるいがいましたが、映画版では、黒崎監督がるいと行、ふたりの心の動きを捉えたいとおっしゃっていたので、強い気持ちで相手と向き合うことを考えて演じました。死に向かっていく愛する人を見て、思い惑う心境ではありましたが、最終的には自分の愛も相手の愛も全部を受け入れる強さを表現できたんじゃないかと思います。 

 

長谷川 :(ドラマ版では)鈴木行という人間は目標に向かって突き進んでいった男だと思うんです。そのエネルギーがだんだんるいを愛する気持ちに変わっていくんですけど、ドラマでも映画でも、彼が仕事へ向けていた情熱がるいにぶつかっていけばいいと思って演じてましたし、恋愛というよりも欲しいものを得たいという行の情熱を表現したいと思って演じていました。

 

 ふたりとも、ドラマ版を踏襲しながらも、映画版ではそれぞれ情熱や強い意思を表現すべく撮影に臨んでいたよう。では、ドラマ版から引き続いて監督を務めた黒崎監督は、映画化にあたってどのような思いで臨んだのだろうか。

 

監督:特に映画だからということは意識せずにやろうと思ってましたが、1本の作品として楽しんでもらえるものを作ろうと思っていました。2時間というドラマよりもはるかに短い時間の中でふたりの人生を描かなければいけないので、より深く、緻密に、細部にいたるまで(ふたりの心情に)目を凝らしたような撮り方をしたいと思っていました。そして、今回はマレーシアが舞台だったので、日本を飛び出して、るいと行が世界の片隅に置き去りにされたような世界を作ったことで、ドラマ版とは少し雰囲気が違った作品になっていると思います。

 

 そんなふたりの心情を緻密に写し撮った本作だが、行を演じた鈴木は銃弾に倒れたという設定のため、劇中ではほとんどがベッドの上で、顔も左目以外は包帯で覆われているという、制約がある中での演技を余儀なくされている。そのような状態で心情を表現することは、常に不自由さと隣合わせの心境だったのだろうか。

 

長谷川:僕の場合は、付加がかかっている方がより役に入り込みやすいというか、五感がすごく研ぎ澄まされやすい状態になるので、制約がある方がより一層役についても考えますし、演じる上で深みが出るんじゃないかと思います。行の心の部分だけを大事にして演技をして、後はカメラが映してくれていると信じていました。

 

 ベッドで寝たきりの、しかも記憶喪失に陥っているかのような行をひたすらに看病し続けるるい。ドラマ版よりも、はるかに強い思いで行を愛するるいを演じた鈴木は、るいを演じるうえでも変化があったようだ。

 

鈴木:ドラマにクランクインする時に、「17歳年下もありだと胸を張って言いたいです」と言ってインしたんですが、やっぱり17歳ってすごい下ですよね(笑)。ただ、具体的に年齢がいくつということや相手に求めるのではなくて、相手の全てを受け入れることが強い愛のかたちなんじゃないかと、るいをとおして感じるようになりました。ドラマが終わった時に、私は本当にるいという女性が好きになっていたので、映画でもう1度るいを演じることになって、どう演じていいのか戸惑いもしましたし、難しいかなと感じてもいました。でも、ドラマでは人間関係や社会的なものと向き合った彼女を表現していて、るいと行ふたりの関係をじっくり描けていなかったと思うので、映画になってふたりがぽつんとどこかに置き去りにされたことで、じっくりふたりの関係に向き合うことができたような気がします。映画になったからこそ、相手のことを見て受け入れられる、るいになれたんじゃないかと思います。

 

 鈴木が語るように、ドラマ版では観られなかった、るいと行のふたりそれぞれの相手を思う強い感情をすくい取った、映画ならではの『セカンドバージン』の世界観を堪能できる作品に仕上がっている。




(2011年9月27日更新)


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Movie Data


(C)2011映画「セカンドバージン」製作委員会

『セカンドバージン』

●大阪ステーションシティシネマほかにて公開中

【公式サイト】
http://www.secondvirgin.jp/pc/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/156864/